2026.06.16AI時代だからこそ大切にしたい「悩む時間」
2026年6月14日の讀賣新聞朝刊に、
「数学にAI利用警告」
という見出しの記事が掲載されました。
未解決の証明問題がAIによって
解けたという報告が相次ぐ中、
世界の数学者たちが、
AIの過度な利用に警鐘を鳴らしているという内容です。
このニュースを見たとき、私は
「これは数学の専門家だけの問題ではなく、
今の子どもたちの学習環境にも深く関わる話だ」
と感じました。
現代のAIは非常に便利です。
分からない問題を入力すれば、
数秒でわかりやすい答えや解説を示してくれます。
しかし、その便利さの裏側で、
子どもたちにとって本当に大切な
「悩む時間」や「試行錯誤する時間」
が失われてしまうのではないか。
今回は、このニュースをきっかけに、
AI時代の学習において決して手放してはいけないものについて
考えてみたいと思います。
数学は「答えの集まり」ではない
新聞記事のもとになった
「人工知能と数学に関するライデン宣言」では、
数学者たちがAIの利用について注意を促しています。
AIは、もっともらしい文章を作ることが得意なため、
一見正しく見えるものの、実際には論理的に誤っている証明を
作り出してしまう危険性があるからです。
ただ、私が特に心を動かされたのは、
AIの危険性そのものよりも、
数学者たちが語った「数学の本質」
についての考え方でした。
宣言の中では、
「数学は単に結果の集積ではなく、
理解、明晰さ、判断力を育てる人間の営みだ」
と定義されています。
つまり、数学の真の価値は
「最終的な答え」を出すことだけにあるのではありません。
なぜその結論に至るのかを考え、
論理を組み立て、自分の頭で妥当性を判断する。
そのプロセスそのものに、大きな価値があるのです。
AIが奪ってしまう「考えるプロセス」
これは、子どもたちの日々の勉強にも
同じことが言えます。
今のAIは非常に優秀で、分からない問題を入力すれば、
解説をすぐに出してくれます。
AIが数秒で正解を示してくれる時代だからこそ
気をつけなければならないのは、
子どもたちが「悩む前に答えを見てしまう」ことです。
分からない問題に出会ったとき、
すぐに答えを見るのではなく、まずは自分で考えてみる。
式を書いてみる。
図を描いてみる。
見方を変えてみる。
間違えた理由を振り返ってみる。
こうした時間は、
一見すると非効率で遠回りに見えるかもしれません。
しかし、この回り道こそが、
子どもたちの「思考の体力」を鍛え上げるのです。
10分間の「にらめっこ」が生む学びの喜び
先日、教室でこんな出来事がありました。
ある生徒が図形の証明問題に取り組んでいました。
どこに補助線を引けばよいのか分からず、
10分以上も図形とにらめっこを続けていました。
AIを使えば一瞬で答えは出ます。
私がヒントを出すことも簡単でした。
しかし、私はあえて声をかけず、
彼が自分で気づくのを待ちました。
しばらくして正しい補助線を見つけた瞬間、
彼の表情がパッと明るくなりました。
自分の力で突破口を見つけたときの喜びは、
誰かに答えを教わったときには得られません。
こうした経験の積み重ねが、
「自分で考えればできる」という自信に
つながっていくのだと思います。
大人の役割は「教えること」から「待つこと」へ
AIの進化はこれからも止まりません。
これからの子どもたちは、AIを避けるのではなく、
上手に使いこなしていく必要があります。
では、そんなAI時代において、
私たち大人が果たすべき役割とは何でしょうか。
それは、いち早く正解を教えることではありません。
子どもたちが悩み、考え、試行錯誤する時間を
奪わないことです。
すぐに答えを与えたくなる気持ちをこらえ、あえて待つ。
子どもが間違えたり、つまずいたりしながらも、
自分の頭で考え抜ける環境をつくること。
答えを教え込むのではなく、考えるプロセスに寄り添うこと。
それこそが、AI時代における大人の大切な役割なのだと思います。
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教室長: 十山和也
開校時間:火~金曜日 14:30~22:00
土曜日 12:30~20:30
