2026.06.18AI時代に必要な、寄り添うだけではない指導
先日、大阪地区のゴールフリーで働く
学生コーチたちを集め、
ミーティングを実施しました。
その中で、
「もし近い未来、完璧な指導を行う『AI塾』が
登場したら、私たちはどう対抗する?」
という問いが投げかけられました。
するとコーチたちからは、
「一人ひとりにしっかり寄り添う」
「他愛もない雑談から信頼関係を築く」
「表情や様子の変化を見逃さない」
といった、人間ならではの関わり方について、
頼もしい意見が次々と出てきました。
確かに、寄り添うことは教育において非常に大切です。
生徒の気持ちを受け止め、
努力を認め、不安な時には励ます。
どれも、子どもたちが前向きに学ぶためには
欠かせない関わりです。
しかし私は、その様子を嬉しく見守りながらも、
同時にこう感じていました。
「果たして、寄り添うことだけで十分なのだろうか」
AIはこれからますます進化していきます。
分からない問題を質問すれば丁寧に解説してくれる。
悩みを相談すれば、優しく肯定的な言葉を返してくれる。
学習計画を立てたり、苦手な単元を整理したりすることも、
今後さらに得意になっていくでしょう。
多くの場合、AIは相手との対立を避け、
穏やかに寄り添う形で答えを返してくれます。
だからこそ、
人間には別の役割が求められるのではないでしょうか。
それが、相手の成長のために、
あえて耳の痛いことを伝える「叱る」という役割です。
近年、教育現場では「褒めて伸ばす」ことが大切にされています。
もちろん、褒めることはとても大切です。
努力を認められることで自信がつき、
前向きに取り組めるようになる生徒はたくさんいます。
しかし、褒めることだけに偏ってしまうと、私たち大人の
「生徒から嫌われたくない」
「良い先生でいたい」
という気持ちが、
知らず知らずのうちに混じってしまうこともあります。
関係がぎくしゃくすることを恐れ、
生徒の甘えや限界を見て見ぬふりをする。
それは一見優しさのように見えて、
本当に必要な関わりから
逃げているだけなのかもしれません。
「怒る」と「叱る」は違います。
怒るとは、感情のままに言葉をぶつけることです。
大人側の感情や都合が優先され、相手の成長よりも、
自分の気持ちをすっきりさせることが前に出てしまいます。
一方で、叱るとは、相手の可能性を信じ、
その子が前に進むために必要なことを伝える行為です。
感情をぶつけるのではなく、
「この子が本当に成長するためには、今、何を伝えるべきか」
を考えた上で発せられる言葉です。
そして時には、「嫌われるかもしれない」
というリスクを引き受ける、大人側の覚悟も必要です。
先日、教室でこんなことがありました。
ある生徒が、勉強から目を背け、
「やらない言い訳」ばかりを探していました。
「時間がない」
「どうせできない」
そう言って逃げの姿勢を見せる彼に、
「自分のペースでやればいいよ」
と無難に寄り添うことは簡単です。
しかし、私は彼のごまかしを
見過ごすことができませんでした。
そこで私は、彼と真正面から向き合い、
あえてこう伝えました。
「言い訳を続けるくらいなら、
一度、本当に受験と向き合うのかどうかを考えた方がいい」
普段、彼に対して厳しく話すことの少ない私の言葉に、
彼はハッとした表情を見せました。
私は続けて、こう伝えました。
「先生は、君がゴールにたどり着くための
道筋を作ることはできる。
でも、その道を本当に進むかどうか、
動くかどうかは、最後は君次第だよ」
彼はすぐには返事ができませんでした。
厳しいことを言った後、
「これで塾に来なくなってしまうかもしれない」
という不安もありました。
しかし、その日を境に、彼の行動は明確に変わりました。
翌日から、彼は毎日自習室に姿を現すようになったのです。
やらない言い訳を口にせず、
ただひたすら机に向かうその後ろ姿からは、
「自分で決めて、自分の足で進む」
という確かな覚悟が感じられました。
もちろん、叱れば必ず変わるわけではありません。
ただ厳しいことを言えばよいわけでもありません。
大切なのは、
その言葉を受け止めてもらえるだけの信頼関係を、
日々の関わりの中で築いておくことです。
「本当に自分のことを見てくれているからこそ、
耳の痛いことも言ってくれるんだ」
生徒にそう感じてもらえる関係性があって初めて、
「叱る」という行為は意味を持ちます。
AIは、生徒が怠けていても、ごまかそうとしていても、
求められれば優しく答えを返してくれるでしょう。
しかし、本気で相手の未来を考え、
ときには踏み込んで「それは違う」と伝えることができるのは、
生身の人間だからこそできることです。
AIが学習を支える存在として当たり前になる時代だからこそ、
私たち大人は無難な「良い先生」に逃げてはいけないのだと思います。
必要な時には励まし、必要な時には耳の痛いことも伝える。
寄り添う優しさと、踏み込む誠実さ。
その両方を大切にしながら、私たちはこれからも、
子どもたち一人ひとりの可能性と真剣に向き合っていきます。
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教室長: 十山和也
開校時間:火~金曜日 14:30~22:00
土曜日 12:30~20:30
