2025.10.04全国学力テスト・中学数学 から見えた "教える"の本質

みなさん、こんにちは。
4月17日に行われた

令和7年度 全国学力テスト

に関する都道府県別の細かいデータが公表されました。
今回は、中学数学の調査結果について見ていきます。
調査結果をまとめた解説資料の隅々まで目を通すことは
まだできていませんが、ひとまず問題と正答率に着目し
気になった問題をピックアップしたいと思います。
ただ、今回は、論理や図形のところは省きました。
判断しにくい部分が多いためです。

なお、正答率については
左側が大阪府公立中のものでカッコ内が全国のものです。

【問題番号1】
1桁の素数を選ぶ問題

正答率 31.2% (31.8%)

3割しか正解できないというのは、かなりの衝撃です。
解答類型を調べてみると、予想されたことですが
1を含んで解答してしまっているコが50%以上。

教える側は、これの何が問題か?ということを
考えるきっかけとしなくてはいけません。
単に「知識不足」「ケアレスミス」と考えるのは
何の解決・改善にもつながりません。

よく、採用したばかりの講師が勘違いするのですが
我々の仕事は「事実を教えること」ではありません。
相手は大人ではなく子どもですから、そのことだけを
行えば良いわけではないのです。
つまり「素数とは・・・」と説明して「はい、終わり」
ではダメだということです。

たとえば、1が素数だと思っているコに
「素因数分解の時に1で割る?」
と確認するとどうでしょう?
おそらく大半のコは「割らない」と答えるでしょう。
僕は、こういうことこそ問題であると思うのです。
つまり、正しい知識を持っているのに使えない。
もっと言えば、知識どうしが結びついていない。
そういった部分を改善していくことが
「教える」という意味だと思うわけです。

【問題番号3】
三角形ABCにおいて、∠Aの大きさが50°のときの
頂点Aにおける外角の大きさを求める問題

正答率 60.7% (58.1%)

4分の1のコが310°と解答しています。
これもなかなか衝撃的な数字です。
数学を「難しい」と感じるコが多いのは理解できます。
必要なものを覚えても解けない時があるので。
ただ「難しい」と感じるコの中には
覚えるべきものを覚えていないコが多いのも事実。

先ほどの素数の問題と同様に、間違えたコに
こんな質問をしてみるとどうでしょう?
「多角形の外角の和は?」
360°と正しく答えられるコもいるはずです。
その知識があれば、少なくとも310°がおかしい
ということぐらいはわかるはず。
正解に至らなくとも、自分の答えが明らかに間違いだ
とわかるようにはしていきたいものです。

【問題番号4】
一次関数y=6x+5について、xの増加量が2のときの
yの増加量を求める問題。

正答率 33.9% (34.7%)

17と解答しているコが約30%います。
「xの増加量が2」と「xの値が2」「xが2」を
混同していることが読み取れます。
もちろん、この中にはミスも含まれているでしょうし
違うと思いながらも、それ以外に浮かばなかった
というコもいるでしょう。
気にしなくてはいけないのは
「言葉を雑に扱うコ」です。
感覚的なものですが、こういうコが増えている印象です。
問題を読まないコも多いのですが、単に問題を読まない
というのではなく、むしろ読んでいるつもりはある。
しかし「言葉を雑に扱う」ために間違える
といったことを繰り返すコが増えていると感じます。
これのタチが悪いのは、本人は単なる「ミス」だと
捉えていることが多いことです。
そうそう、最近のコたちはすぐに「凡ミス」と言います。
「(平)凡」でもなければ「ミス」でもないんです。
でも、それがわかっていないんですよね。
そこをわからせるのも教える側の仕事です。

言葉を雑に扱うコは、
人との関係もどこか雑になりがちです。

なぜなら、言葉にはその人の「相手への思いやり」や
「距離感の取り方」が表れるからです。

言葉を丁寧に扱えるようになるということは、
相手を大切にできるようになるということ。
そしてそれは、学力や成績とは別の、
人としての大切な力だと思います。

【問題番号5】
生徒40人のハンドボール投げの記録をまとめた
度数分布表から、20m以上25m未満の階級の相対度数を
求める問題。

正答率 36.5% (42.5%)

度数分布表の「20m以上25m未満の階級」には
はっきりと度数が10と書かれています。
にもかかわらず「相対度数」を10としてしまったコが
大阪では20%もいます(全国では15.8%)。
これも「言葉を雑に扱っている」ように思えてきます。
そもそも、「相対」と「絶対」の意味や違いというものを
理解できていない危うさも感じます。
これも感覚的なものですが「言葉を知らない」コが
増えているような印象を受けます。
非常に学力が高いのに言葉を知らなさすぎるといったことが
以前よりも多くなった気がするのです。


以上、教える側の人間として特に気になった問題を
いくつかご紹介させていただきました。
この後、理科や国語も見てみたいと思います。
そして「生徒質問調査」の結果との関連や仮説についても
書かせていただくつもりです。

PAGE
TOP